1. 運動機能の変化 |
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神経系、筋肉系、骨格系ともに衰え、運動機能は低下します。 |
1) |
神経系
脳の重量が減少(60歳頃からはじまる。CT上では、40歳ごろから萎縮が始まります)し、神経細胞が減少するため、身体の細かい動作を中枢神経に伝える経路と、それを筋に伝える経路、および反射反応が低下したり、認知症がおこります。姿勢の回復が遅くなり、動作が緩慢、身体が不安定となり転倒しやすくなります。 |
2) |
筋肉系
20歳前後をピークに、加齢とともに低下(40歳頃から急速に低下)し、筋線維は細くなり、痩せた筋肉となります。筋力、持久力が低下して、疲れやすくなります。痩せた筋肉は、水分の貯蔵が減って脱水症をおこしやすくなります。
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3) |
骨格系
骨量が減少します。骨粗鬆症になりやすく、骨折もしやすくなります。特に閉経後の女性に多くおこります(女性ホルモンの分泌が減少して骨内のカルシウムが不足するためです)。脊椎の変形や椎間板の変性により背中が丸くなり、姿勢の変化がみられます。麻痺により荷重がかからなくなると、骨はさらにもろくなります。
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2.感覚機能の変化 |
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視力、聴力、嗅覚、味覚、皮膚感覚ともに低下します。 |
1)
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視力
水晶体の屈折力の低下、調節力の低下、暗い所ではモノが見えにくくなります(暗順応の低下)。白内障になります。老眼となり文字が読みにくく、疲労感や頭が重く感じます。
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2) |
聴力
高音が聞きとりにくくなり、次第に中音も聞きとりにくくなりますが、低音はあまり変化しません。一般的に日常生活の会話が聞きとりにくくなります。
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3) |
嗅覚
鼻腔内粘膜の機能低下(神経終末の消失)により、においに鈍感になります。ガスもれなどの臭いに気づかないと危険です。
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4) |
味覚
中高年になると、舌の表面にある味蕾の萎縮により味覚は低下し、甘さ、塩味は濃い味でないとわからなくなるため、糖尿病や高血圧に要注意です。
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5) |
皮膚感覚
触、圧、温、冷、痛覚などの感覚が低下し、発汗機能、皮膚温の調節が不十分になるため、暑さ、寒さ、痛みに対して鈍くなります。
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3.生理機能の変化 |
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呼吸器系、循環器系、消化器系、泌尿器系、血液・生体防御系、内分泌系のいずれも機能低下します。 |
1) |
呼吸器系
息をする換気能力が低下し、痰を出しにくくなるので、感冒や肺炎にかかりやすく、症状が長期化します。
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2) |
循環器系
心機能、心拍出量は低下し、血管は動脈壁が硬くなり、伸展性を失い血圧が高くなります。心臓は肥大し、虚血状態となります。
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3) |
消化器系
消化・吸収能力は低下します。歯の欠損や咀嚼機能の低下がおこり、嚥下反射も不十分となり、誤嚥しやすくなります。食欲は低下し、下痢、便秘になります。
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4) |
泌尿器系
腎機能が低下し、膀胱括約筋が緩むため、頻尿、尿もれ、排尿困難などをおこしやすくなります。また、残尿の増加は尿路感染を引きおこします。男性は前立腺が肥大します。
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5) |
血液・生体防御系
骨髄・造血機能が低下して、貧血になりやすくなります。
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6) |
内分泌系
ホルモンの分泌が低下し、病気に対する免疫力が弱くなり、ストレスに対する身体の反応が鈍くなります。
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4. 精神機能の変化 |
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記憶力、記銘力(新しいことを覚える)、想起力(記憶を必要なときに取り出す)は低下しますが、長年積み重ねてきた想像力、理解力は低下しません。また知的、情緒的な面は高い水準を保ちます。必要な物の置き場所がわからなくなったり、大事な約束などを忘れるようになります。
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5. 性格の変化 |
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自己中心的、保守的、喪失的になります。 |
1) |
自己中心的
考えに柔軟性がなく、自分の考えにこだわりがちになり、入ってくる情報も少なく頑固になります。
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2) |
保守的
新しいことがなかなか覚えられないため変化を嫌い、今までのやり方にこだわります。
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3) |
喪失的
社会的疎外、身近な人間の死などによって、多くのものを失っていき、孤独から不安、寂しさを強く感じます。
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